子供の頃、鐘の音が怖かった。理由もなく死ぬほど怖かった。
初めて行ったある公園には、紐を引っ張ると音が出る鐘があった。
子供でも少し背伸びすれば届くような紐の長さだった。
最初はそんな物目にも入れずに、俺は遊具で楽しく遊んでいた。
が、ある出来事がその様子が一変させた。
誰かが意味も無く、その鐘を鳴らしたのだ。
あの頃の恐怖は思い出せないが、死ぬほど泣き叫んだのはよく覚えている。
「やぁあめめええろおぉおおおおおおおぉぉおおおーーーーーーーーー」(泣きながら)
なぜ怖いのか判らないが、とにかく怖くて怖くて仕方なかった。
俺は泣きながら全力で家に帰って、耳を塞いでガタガタ震えていた。
親に「どうしたの?」と真顔で聞かれ、「鐘の音が怖い」と言ったら、
変な顔をされたのもよく覚えている。
今でも何故怖かったのかはわからない。前世で鐘に関する何かがあったのか?
会社の帰りにいつも見る子だ、その子はいつも窓から星を眺めている。
今日は思い切ってその子のマンションの部屋にいってみることにした。
彼女のマンションの部屋の前に着くと、
玄関に鍵穴があったので、こっそり覗いてみることにした。
部屋の中は真っ赤なのはわかるのだがよく見えない。
後で聞いた話だが、その女の子の目は真っ赤だったらしい。
ふと、何かを感じて鍵穴から目を離した。
その瞬間にその鍵穴からすごい勢いでマイナスドライバーが突き出して、
狂ったようにガチャガチャとかき回している。
暫くするとそれは引っ込んだので、気を取り直してドアを開けてみることにした。
どうやら玄関のかぎは開いているらしい。中に入ってみてびっくりした。
星を見上げていると思った子は実は首をつって死んでいた。
呆然として窓の外を見ていると、なんとそのマンションの
屋上から飛び降りた女と目があってしまった。
”お母さん、お母さん、お母さん、お母さん、・・・”と書かれてあることに気づいた。
それを見て驚いて呆然としていると、友人のAとBが部屋に入ってきた。
僕の様子がおかしかったのでついてきたと言っている。
2人に事情を説明しようとするとAが突然「コンビニにアイスを買いに行こう」と言い出した。
こんな時に何を言い出すんだと思ったが、Aの剣幕がすごかったので言うことに従った。
ふと気づくと、冷蔵庫と壁の間の数センチの隙間に髪の長いペラペラの女がいて、
こちらをじっと見つめている。更にガラス戸の向こうでは、眼球の飛び出した180はあろうか
という黒いコートの男がにらんでいた。構わず部屋を出ると、
Aが「あの部屋のベッドの下に鎌を持った男がいた」という。
マンションのエレベーターで降りていくと、廊下に女が立っていた。
しかも、1階降りるごとにどんどんこちらに近づいてくる!
やっと外に出た僕たちは、恐ろしくなり、さっきのマンションを見上げると
なんと全ての窓から無数の手が伸びこちらに手を振っていた!
ゾッとしているとBが「俺たち友達だよな?」とわけのわからないことを言い出した。
Bは足元を指差した。Bの足元を見ると、Bの足を地面から出た手ががっしりと掴んでいた。
僕とAはびっくりして近くにあったバイクに飛び乗り逃げた。
すると後ろから四つんばいの老婆が追いかけてくるではないか!
聞いた話によると、この老婆は追い炊きしている風呂に浸かっているときに発作を起こし、
そのままシチューのようになって無くなったらしい。
高速道路に入り、必死になってかなりのスピードで逃げていくと対向車や
後ろの車がやたらパッシングしてくる。
後で聞いた話では、僕たちの上に子供がしがみついていたという。
ここできがついたことがある。高速道路の脇の壁の上に奇妙な標識があるのだ。
よくみるとそれは標識ではなく、着物をきた女の子が高速道路の壁の上に立っていた!
恐怖に怯えながら急いで高速をおり、山道に差し掛かると小学生くらいの女の子が道路
に立ちふさがってきた。
『助けてください・・・乗せてください』といっている。
無視して逃げると今度は、男が立ちふさがってきて『女の子が来ませんでしたか?』という。
気持ち悪い男だったのとあせりからその場を立ち去ってしまった。
後日聞いた話しによると、それは幼女連続殺人の犯人だったらしい。
僕は「あぶなかったなぁ」と言ったが後ろに乗っているAは無言だった。
おかしいなと思い後ろを向くとAの頭がなくなっていた。
バイクのボディには無数の手形がびっしりとついており、シートがくっしょりと濡れていた。
タイヤを見ると、そこには女性と思われる大量の髪の毛が絡まっていた。
もう少しで駅につくので僕はバイクとAをほっぽりだして駅に急いだ。
すると正面から普通の人とは何かが違う感じの人が歩いてきてすれ違いざまに
「よくわかったな」と呟いた。さらに「夢と違うじゃねぇかよ!」という。
もう、僕は恐ろしさのあまり我を忘れて電車に飛び乗った。席が空いていたので、古め
かしい格好をした少女の隣に座った。
「 次は活けづくり~活けづくりです。」と社内アナウンスが流れ、
4人のぼろきれのようなものをまとった小人に、後ろに乗っていた男の人が刃物で身体をさかれ、
本当に魚の活けづくりの様にされていた!このままだと次は自分の番だ!
あまりの恐怖に一刻もはやく駅につきたい!と思っていると、やがて目的の駅に着いた。
電車を降りようとするととなりの少女が言った「やっぱりこうなるとおもってたんや」
その子がくるっと振りかえり、「今度は落とさないでね。」と言った。
更にその子が僕の背中をみながらつぶやいた。「どうしてパパ、ずっとママをせおってるの?」
僕は顔面蒼白になり、電車を飛び降り駅を出ると「日本だるま」という看板のついた店に飛び込んだ。
ただのだるま屋だと思ってだるまを眺めていると、一つのだるまが話し掛けてきたではないか!
「助けてください!私は立教大学3年の高橋といいます!」
もう僕は訳がわからなくなり、その店を飛び出すと、何かにつまづき転んでしまった。
その際、したたかに膝をアスファルトに打ち付け、膝をすりむいてしまった。
激痛に耐えながら、膝の露出してしまっている皿をみると、フジツボがびっしりと張り付いていた。
膝を抑え半泣きになりながら、足元を見ると一冊の日記が落ちていることにきづいた。
「もういらない しまだいらない」
洒落怖ダイジェストだよ。
似ている話は書き込まないようにね。
結構前の話。
その時俺は絵を描くのが趣味で、HPとかも持っていた。
そんでまあ、同じように絵を描くのが趣味な人との交流を楽しんでいたわけだ。
ある日、ネットで同い年の知り合いのAの絵描きサイトが閉鎖されていた。
閉鎖するならせめて一言位連絡入れてくれてもいいのにな…と思いもしたが、
まあ、何か事情があったんだろうな、と思って割り切る事にした。
数ヵ月後、自分のHPのリンクを整理していたら、そのサイトのリンクが残っていた。
何気なくそこへ飛んでみたら、AのHPが復活していた。
あれ?ここ閉鎖したんじゃなかったっけ?
と思って中身を見ていたら、日記に洒落にならない事が書いてあった。
うつ病で首吊って自殺未遂
Aは不登校やらリストカットやらオーバードーズやら色々と精神的に病んでいた様で、
HPを復活させたのも欝が治ったからではなく、闘病の一環としてやっていたのだろう。多分。
俺がAに出来た事と言うと大したことは無いんだが、
少しでも力になれればと思ってちょくちょく話し相手になっていた。
最初の頃はやばそうだったが、時が経つにつれてAも大分良くなってきていたように見えた。
俺はと言うと、その時高校3年生、つまりバリバリの受験生だったので、
夏が過ぎた辺りからはほとんどネットに繋がなくなっていた。
その頃にはAも大分落ち着いてきていたし、もう大丈夫だろうと安心していた。
俺は受験に専念し、大学に合格する事が出来た。
合格して落ち着いたところで、久しぶりにAのHPに行くと、Aも引きこもるのを止め、専門学校に行く事にしたらしい。
「一緒に新生活頑張りましょ」
「新生活は不安ですがドキドキします」
とかAも色々言ってたんだよ。だからまあ俺も喜んでた訳だが。
んで、学校の始まる手前、急にAのHPの更新が途絶えた。
3月末に俺のHPのお絵かき掲示板に絵を描いて以来、何の音沙汰も無い。
常識的に考えて、単に忙しくて更新できないだけだろう。
とは思ったが、前に自殺未遂した事もあったし、何となく嫌な予感がした。
入学式のシーズンが過ぎた辺りで、久しぶりにAのHPの日記が更新してあった。
内容は入学式について。
日記の文章が少し変だったが、嫌な予感ってのは思い過ごしかと思い、
Aの掲示板に俺の方の入学式の内容を軽く書き込んだ。
そこから一ヶ月位、AのHPは更新されなかった。
掲示板も放置されていて、俺の書き込みに対するレスも無かった。
妙だな~と思っていたある日、AのHPで久しぶりに日記の更新があった。
私はAの父親です。
3月●●日、Aは他界しました。
( д) ゜゜
最初は手の込んだ嘘かと思ったが、本当のようだった。
その事に呆然としている時、ふと●●日と言う日付に引っかかる物があった。
自分のHPのお絵かき掲示板を見ると、Aが俺のHPで、最後に描いた絵がすぐ見つかった。
日付を見ると、●●日の前日の午後9時頃。
…もしかして、死ぬ直前にかいた絵?
Aは俺に対する別れの挨拶のつもりで絵を描いたのだろうか。
すぐにレス付けておけば最後に話が出来たかもしれない。
もしかするとAを止められたかもしれない。
Aが死んでからそろそろ1年近く経つが、
今もふと、あの時ああしていれば…と考え込む事がある。
ここまでなら純粋に悲しい思い出だったのだが…。
この話はもう少し続きがある。
何で3月に亡くなったはずのAのHPが、4月に更新されてたかと言うと、
Aが死ぬ前に机の上にHPのパスワードを書いた紙を残しておいたようで、
つまり4月以降に書いた日記は父親が書いていたという事だ。
俺は↑で言ったように、Aが亡くなった後で掲示板に書き込んだんだが、
「俺も入学式行ってきましたよ。(中略)では、お互い新生活頑張りましょう」
これを子供を亡くしたばかりで、悲しんでいる親に言っていたと言う訳で…。
何 や っ て ん の 俺 (‘A`)
体験した事をただ書いてるだけだから、他人にとってはオカルトでも怖くも面白くも無い話だが、
「俺にとっては」死にたくなるほど洒落にならない話です。
こんな話長々としてすまん。
404の言うとおりだと思う。
気にするなといってもそうはいかないだろうけど、そういうことがあるのも人生だ
藻前は喪前の人生をガンガレ。
久し振りにオカ板来ました。相変わらず盛況だね>洒落怖
>>749
男子高校生の純情を弄ぶとは!
これ見よがしな写真UPキボン
>>400
俺も片恋相手が亡くなってたの知らずに年賀状出しちゃったことあるよ。
高校3年の時だ。「共通一次がんばろう!一緒に東大行こう!」って。(年ばれるな)
年賀状の返事がなかったので「あー嫌われたかなぁ」と思ってた。
そしたら、共通一次終わった後に、その子のお母様から丁寧な書状で知らされて、泣いた。
受験に差しさわりがあるといけないから黙っててくれたそうだ…
…ああそうだ。そのことを俺が知ったのはちょうど17年前の今頃だった。
節分だったな。ちょうど私立の一次試験があったから良く覚えてる。
そっか、俺的には彼女の十七回忌だったんだな。
偶然だろうけど、思い出させてくれてありがとう>>400
親御さんにとっては、自分の息子にもそういう友達(というか)がいてくれたんだ、
ということは救いになったと思うよ。少なくとも全くの孤独じゃなかった、と安心したと思う。
おまいはいいことをしたんだよ。
優しいヤシだな。もうあまり気に病むな。
これは本当にあった話です。
あんまり怖くないかもしれませんが、とりあえ書きます。
私には付き合っている彼氏がいます。その彼氏とは家族ぐるみの付き合いで
よく家に泊まらせてもらったりしています。
その日もいつもの様に、彼氏の家に泊まってみんなでテレビを見ていました。
テレビ番組の内容は、霊能力者が心霊スポットを霊視するというものでした。
しばらくその番組を見ていると、決まり文句の様に霊能力者が
『ここに霊がいます…。』と言いだしました。
その瞬間、霊感のある彼氏のお母さんが大きな声で
『りえちゃん(私)早くチャンネルかえてっ!!』
私はビックリして固まっていました。彼氏のお母さんは、さらに
『出てる!出てる!テレビから幽霊出てきてる!!!!』
彼氏は急いで電源を切り慣れた感じで『遅かった??』と聞ききました。
すると彼氏のお母さんは『遅すぎるわ!もう、りえちゃんの横座ってる!』
と言いました。彼氏の家ではこれが初めてじゃないそうです。
この出来事は16年間生きてきたなかで1番こわかったです。
太陽系の一番外側を回る太陽系10番目の惑星・金王星。
地球からの距離は44天文単位(1天文単位は地球から太陽までの距離)で
そのため地球に金王星からの光が届くことはないので誰もその存在を知らない。
しかし50年に一度だけ金王星は地球に接近し、その光を二人一緒に見たカップルは
結ばれると言われている。
俺が金王星の話を初めて聞いたのは高校の時、部活中の怪我で入院したときの事だ。
俺が入れられたのは4人部屋で、俺の他に入っているのは一人だけだった。
俺より少し年下くらいの女の子で、大人しそうな子だった。
彼女は星を眺めるのが好きだった。夜はいつもベッドから空を見ていた。そして
いつもこんな事をつぶやいていた。
「金王星は見えないかな」
話しかけてきた。
「金王星って知ってる?」
彼女は俺に金王星について色々話してくれた。
金王星はとても小さくて遠い星で地球の人はその星のことを誰も知らないこと…金王星
の光を好きな人と一緒に浴びると幸せになれるということ…金王星の事を話す彼女の姿はとても生き生きして見えた。
話が終わったあとで俺たちは一緒に金王星を見る約束をした。彼女にとってはちょっと
した恋人気分だったのかも知れない。しかし人間というのは勝手なものでで俺の方は
と言えば退院の頃にはそんな話はすっかり忘れていたのだった。
飲んでいたときのことだった。彼女からメールが来たのは3ヶ月ぶりくらいだったと思う。
その間に俺は大学生になり、彼女にメールのアドレスを教えたことさえも忘れていた。
「金王星を見ましょう」
一言だけのメールだった。
しばらくなんのやりとりもしていなかった罪悪感(と言うのも変な話だが
から本当はすぐにでも彼女の所に行ってあげたかったのだが、友人に「彼女か?」と
冷やかされるのが嫌で行かなかった。結局飲み会がお開きになったのは2時くらいに
なってからで、それから俺は慌てて病院に行った。今思えばあのときもっと早く行って
あげていれば彼女はあんな事にはならなかったのかも知れない。
あの病室に彼女の姿はなかった。受付で教えられた場所は集中治療室だった。
手首を切ったらしい。テレビなどで見たそのままの、酸素マスクをつけて体中に
点滴の針を刺された彼女の姿がそこにあった。意識はあるようで、俺の方を見て
何か言った。付き添いの看護婦の人がマスクを外してくれた。彼女の声はかすれていたが俺にはこう言っているように聞こえた。
「キンノウセイ・・・」と。
その後彼女の容態は急変し、そのまま死んでしまった。あっけないほど
あっという間のことだった。
それから俺は金王星について色々と調べてみた。しかし金王星という名前はどんな文献
にも載ってはいなかった。
しばらく経ってから俺はあのとき付き添いをしていた看護婦さんから、彼女は元々精神に異常があってここに精神科の患者として入院していたことを教えてもらった。外科に
いたのは階段で足を踏み外して骨折したからだったそうだ。
「金王星」は彼女の妄想の産物にすぎなかったのだろうか?
それは切ない話ですね…
ちょっと「怖い話」スレには勿体無いっすよ。
いつか病気が良くなって、青春を謳歌したい。
素敵な彼氏とめぐり合いたいって、願っていたんでしょうね。
勿論彼女は元気になったのでしょうか?
桐原さんは俺の話を聞いたあと、なぜか浮かない顔をして黙ってしまった。
「・・・荒唐無稽すぎてなんて言えばいいのかわかりませんよね?
すいません変なこと言って」
桐原さんは首を振った。
「ううん。興味深い話だったよ。・・・ねえ杉本君、気悪くしないでね。私思ったん
だけど・・・」
「その子、『金王星』って言ったんじゃなくて『君のせい』って言ったんじゃない?」
続きあったのね…
初めて知りました
私が昔階段から落とされて足折ったときは
男女同室でした。流石に体拭いたりとかしなきゃならない
重度の患者さんのいらっしゃるところは男女別か個室ですけど。
時に小学3年生。
学校が終わると、真っ先に家に帰りランドセルを放り、
Uターンで家から飛び出しては、ほどない距離にある児童公園へと遊びに行っていた。
そこには同じように集う友達が幾名、公園は子供なりの社交場として機能し、
来る日も来る日も友達同士そこで夕方まで遊ぶ生活を送っていた。
そして話は変わって、この公園には時々現れる名物の少年がいる。
歳は同い年、容姿も至って平素であるが、三つの非凡な点が挙げられた。
一つは彼には悲しいほど友達がいないこと。
もう一つは家が裕福であること。
もう一つは彼は公園に来る前に、予め駄菓子屋でお菓子を買い漁り、
そのお菓子を公園内の同い年くらいの子供達に配って回っていた。
そしてお菓子を配り終えると、あげた子供達の元に遊びの輪へと赴き
「僕も仲間に入れてよ。」と言う。
そういった哀しい習慣を持った少年だった。
しかし、小学校低学年の子供達の話である。
お菓子を配った彼からしてみたら残酷な話ではあるが、
義理が必ずしも通るとは限らず、
遊びの輪に入れてもらうよう懇願しても、
中々の高確率で拒否を受けていた。
ただ、思い返すに、拒否した子達の心理は決して理に適わぬことではなかった気がする。
「お菓子はあんがとっ。でも遊び相手としてはつまんねえから御免だね~。」
と、いった安易な疎外ではなかったと思う。
むしろ、
「お菓子を配った直後に『僕も仲間に入れて』っていう行動が、
あまりにも・・なんというか重すぎる。遊ぶにしても心が砕けないよ。」
に近い心理だったはずだ。
非常に気持ちはわかるが、大人の理屈で言えば
お菓子をもらった以上、気立ての良さも見せてやれとも言えるし、
重圧を感じるのなら初めからお菓子を貰わなければ良い話だ。
しかし、小学2、3年の鼻から汁を垂らす餓鬼共は、
目先のお菓子を食べ、目先の重苦しい少年を払いのける。
そういった当座しか考えない選択を重ねていったわけだ。
当時の自分は当時から根が臆病な気があったので、
お菓子は押し付けられても拒否していた。
俺の親が、他人から物を貰うことに関しては厳しい躾を展開していたのも関係している。
しかしそんな俺も所詮餓鬼は餓鬼。
ある日、お菓子を甘受してしまうのだった。そして、、、
何故その時に限って貰ってしまったのか。
その理由は今となっては思い出せない。
しかし何にせよその時俺はお菓子を貰った。その事実だけは確かだった。
そのただ一度だけ貰った日、
そして貰ってからの展開は今も記憶に鮮明に焼き付いている。
彼はいつものようにお菓子を配り終えたところで、
懲りることもなく、目に付く同年齢の子供達に話し掛けて回った。
その日は彼からしたら「不作」だったのだろう。
ことごとく拒否を受け、彼は顎を軽く持ち上げ途方に暮れた顔をしていた。
そんな彼の姿を「可哀想になぁ」とお菓子を喰らいながら眺めていた、その時。
彼がパッとこっちを見た。目が合う。彼はそのまま体の向きも視線に合わせ、
そして真っ直ぐに俺の元へと駆け寄ってきた。
彼「ねぇ、遊ばない?」
俺「え・・あ・・」
彼「なんかして遊ぼうよ!何する?」
困った。
彼の悪癖ではあるが、遊びの企画や内容は完全に相手に任せてしまう。
ましてや、初対面に近い立場で1対1である。
この状況において楽しめる遊びなどロクにあったもんじゃない。
彼と遊ぶこと自体は引き受けてもよかったのだが、
ただ企画がどうしても思い浮かばなかった。
俺が悩みあぐねいているのを尻目に、彼は指示を享受する気満々な顔で俺を覗き込む。
その時の、小学3年なりの稚拙な脳を持った俺は思わずこう彼に言った。
「ごめん、今は無理!」
勿論、実際は全然無理じゃない。
暇ならあるが、ただその場をしのぎたかっただけに発した言葉だった。
そして彼からは当然の返答。
「忙しいの?」
「うん、忙しい・・。」
当然、彼は喰らいついてくる。
「じゃあ、明日なら大丈夫?」
「えーと・・明日も駄目。」
「じゃあ明後日は?」
「ごめん、駄目・・。」
「いつなら大丈夫なの?」
そして俺は何とも飛び抜けた返答をした。
「4年後なら大丈夫。」
何故4年という数字を打ち出したのかは今もわからない。
ただ当時8歳の子供にとっての「4年後」とは、
果てしなく遠い未来であり、霞み掛かって到底予見の及ばない話だった。
彼をそんな霧中の奥へと振り払いたい一心だけは容易に考えに及ぶ。
して、次に驚くべきだったのは、この苦しい返答に、更に彼が返した返答だった。
「うん、わかったよ。」
承諾したのだ。まさかとは思いドギマギしつつ、俺は
「じゃあ、これからは暫く忙しいからうちに帰るね。」
と言ってその場を退いた。
ここで帰らなくては彼への発言の辻褄が合わなくなり、
そのためだけにその日は家に帰って、夕方の子供番組の時間まで暇を持て余していた。
それからというもの公園で彼を見かけたら、4年後まで忙しいと言ってしまった手前、
そそくさと別の公園へと場を移して逃げ回ったのだが、
そんな下らない気遣いも1回か2回しかしなかったと思う。
空約束をして間も無いある日を境に、彼はその公園にはパタリと現れなくなった。
やはり子供とはポジティブでいて、そして残酷だ。
当時の俺もそれに然る。4年に到底及ばぬ一ヶ月間を経ては、
彼との約束などすっかり忘れてしまい、変わらぬ公園で、変わらぬ友達と、
そしてまた変わらぬ時間を過ごしていた。
時は流れ、
で、
時に中学1年。
かつて小学生の頃遊んでいたあの公園は中学への通学路の傍らにあった。
公園を過ぎてすぐのところに自宅であるマンションが高く聳える。
その日もいつもと同じように授業を終え、
我が家へと下校を済まそうというところ、
公園の横を通り過ぎると、何やら公園を挟んだ反対側の道路に同年齢っぽい少年が目に付く。
その少年は柵、公園、更に柵を超えた難儀なところからこちらを見ている。
とはいえ見覚えのない顔であるし、ただ「見ている」というだけのこと。
気には留まったが、何かの偶然か、人違いかで見てるだけだろう。
そして公園の横を抜け、マンションの入り口を眼前にしたところで、
俺が通る道と、その怪しい彼が通る道は1本に統合された。
同じ道に立ったところで彼はますます深く俺の顔を見てきた。
流石に此処までなると俺も気味が悪くなり、
相手の顔をチラっと見た。目が合う。
彼はそのまま体の向きも視線に合わせ、
そして真っ直ぐに俺の元へと駆け寄り、開口一番。
「ねぇ、4年前約束したさぁ。」
これマジ話。
その日を前後して、彼を地元で見かけることは全くなかった。
なのに、その一日に限って、彼はかつて約束を果たした場にまた現れたのである。
だから推測ではあるのだが、
きっと彼は小学3年の時期を境に、
何らかの環境の変化があって、
俺と共通であったその地元に来る機会は無くなっていた。
だけど彼は約束を忘れることはなく、
4年前に交わした約束を果たすためだけに、
あの日、かつて約束を交わした公園の脇に立ち、
耽々と、俺の帰りを待ち続けてたんじゃないかって。
>>475>>476
一応俺んちに迎えて遊んだ。
ただ遊び道具もなかったので、俺の持ってる漫画を彼が読んでるばかりで、
会話も殆ど無く、夕方になったら「親が帰ってくるから」とこじつけて、帰ってもらった。
彼が玄関を出て、扉が閉まりきった時は、
数トンの重りから解き放たれたような安堵感を覚えたよ。、
実質的に遊んだ時間は2時間にも満たないと思う。
でも正直さ。声をかけられて、0.5秒の間を置いて、4年前の約束を思い出した瞬間から、
絶えず背筋にブワァっと冷や汗を出し続けてるような状況だったもんで、
もう楽しませようとか持て成そうってどころじゃなかったんだよな。
凄く彼に失礼な言い方をしてしまえば、何かこう、見た目だけが同じ人間だけど、
心とかは全く違う、得体の知れない生物と遊ばなくちゃいけないような感覚だった。
んで、もうそれっきり。二度と彼を見ていない。
何だったんだろうと今で思う。
引用元: https://hobby7.5ch.net/test/read.cgi/occult/1105765771/
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